PLACES

船乗りの街で踊ってみる:
ブエノスアイレス

 南米のパリと呼ばれるブエノスアイレス。近代にヨーロッパへの輸出で繁栄した移民の国には、当時に建てられた、素晴らしい飾りつけの歴史的なビルが立ち並びます。そしてカラフルな旧港町の歴史地区ボカのカミニートやサン・テルモでは路上でアルゼンチンタンゴのパフォーマンスが見られます。


ブエノス・アイレスは南米のナポリ

 ブエノスアイレスは、南米のパリと称されますが、実はイタリア移民が多く、雰囲気も古き良きイタリアの庶民の街を感じさせます。宗教とルネッサンスの中世フィレンツェと現代ミラノの狭間とも言えるイタリア的な近代がブエノスアイレスには感じられます。
 広大な大地を背景にし、ブドウや草原で自然に増えていく畜産によって生まれた富は、イタリアよりイタリア的で、スベインよりもスペイン的な内面をブエノスアイレスに与えています。
 

See

 移民の時代から南米有数の港だったブエノスアイレスはその名の通り、乾いた気持ちのいい風が通るところでした。船の大型化にともなってマタンサ川の河口を少し入ったところにあるカミニートでは手狭になり、現在は大型船が入るレティーロに港が移されました。
 北のダルセナ・スル川(実際には幅広い運河ですが)は日本でいうなら横浜の赤レンガ地区の雰囲気です。開発されたベイエリアには150年前のアルゼンチン軍、練習帆船「プレジデンテ・サルミエント」号が展示されています。
またその舳先にあるのはラ・ムヘール橋です。女性という名前の橋ですが、優雅な曲線と尖った塔は意味深です。
 またブエノスアイレスには、世界で最も美しいと称される書店があります。閉館して時を経たオペラハウスを改装して書店にしたものですが、舞台はカフェになっていて客席部分に本が並んでいます。たぶん時間があれば半日は楽しめる場所でしょう。ブエノスアイレスにはそんな場所が多くあります。

100年前に世界航海をしたサルミエント号。現在、博物館になっている。
カサ・ロサーダの真西の運河にあるラ・ムヘール橋。

オペラハウスが本屋になったエル・アテネオ。

 

Do

 ブエノスアイレスで何をするか、というならばやはりアルゼンチンタンゴを巡るのが楽しいでしょう。思いっきり観光客のノリでカミニートに行き、ストリートのレストランのタンゴショーを見て、撮影用のダンサーさん(スタイルだけで踊れません)とポーズを決めてみるのも楽しいでしょう。
そして、夜はタンゴバーでプチレッスンをして軽く踊ってみるのも悪くありません。
 おすすめはBuenos Aires Club。老舗のタンゴクラブで、週に2回無料のタンゴレッスンをやっていました。その後、ライブが入りますがこれが気合の入った若い音楽家が登場します。

カミニートの名物店の前でポーズを撮る人。
ボカの裏通りにはアートな店や車が多い。

 

Food & Drink

 アルゼンチンといえば牛肉。それもステーキです。初めて行った時にステーキを頼んだら、最低のサイズで500gでした。こりゃ食べられないかなと思いつつ、ハーフの赤ワイン、マルベックを頼んだのですが、あまりにも美味しく、簡単に食べてしまったのを思い出します。地元の人はそれにマッシュポテトの大皿を食べていたりします。
 それにしてもイタリアのセンスが目立つブエノスアイレスは、おしゃれ可愛お店が多いです。サンバレンティンのオーガニックレストラン、Hierbabuenaは美味しい料理だけでなく内装も楽しめます。また近所のスペイン料理、La Poplar豪快な盛り付けに似合わないかわいいインテリアが魅力的でした。
 ElObreroは、アルゼンチンのサッカーの神様、マラドーナが若い頃から通っていたお店だそうで、彼に絡んだグッズが所狭しと飾られています。この感覚がアルゼンチンらしくてグッと来ました。

Hierbabuena。ストライプとソファのバランスが可愛い。

La Poplar。赤とライトグリーンはブエノスアイレスではよく使われる色使い。
EL OBREOの全景。サッカーファンであれば一度は行って欲しい。

 

Historical Restaurant

 お洒落なブエノスアイレスで本気の美食を体験するなら一度行ってほしいのがEl Progresoです。アルゼンチン独立に際して、当時の政治家、経済人が拠点としたという歴史のある場所です。超高級レストランですが、暴落気味のアルゼンチンペソなので、円安でも厳しい値段ではありません。

2階のレストラン。カジュアルな服では似合いそうもない。
エントランスを入ったすぐのロビー空間。

メインダイニング。格子柄の床がマッチするデザインだった。

 

Shop

 アンティーク好きならば絶対に行って欲しいのがサン・テルモ市場です。市場と名前はついていますが、実際は個人のショップやレストランが集まった場所です。
 ここで特におすすめなのがアンティークです。100年以上前のアルゼンチンの好景気時代に世界中から集まった家具などが時を経て骨董品になっています。
そのためそれほど効果ではなく、私も自宅用に小さなシャンデリアを買いました。いまだに玄関を照らしています。
 サン・テルモは環境客にも人気ですが地元の人にも人気です。パリのようなパッサージュがあり、イタリアのおばちゃんのような明るい声がけがあり、南フランスのようなお洒落可愛いショップが並んでいます。

サン・テルモ市場の南口。アートマーケットの看板になっている。
お土産やさんのマグネットプレート。お洒落感がお土産レベルでない。

サン・テルモの骨董品屋さん。世界中のアンティークが置かれていた。

 

Stay

 パレルモはメディア関係者が住むパレルモハリウッド、アーティストが多いパレルモソーホーなどを擁する、アルゼンチン最大の地区です。そのほぼ中心にあるのが、マグノリア・ブティック・ホテルです。
 この特別なホテルは住宅街に小さな看板があるだけのファサードです。よく見ないとホテルとは気がつかれないでしょう。アートギャラリーやアトリエのような雰囲気です。
 中に入ると邸宅と呼んで差し支えない大きな3階建ての住居でした。小さな、レセプションというよりは秘書の机というくらいの雰囲気でチェックインを済ませます。
どちらかといえばバスルームのついた個室のような雰囲気で、恭しいホテルのサービスはありません。
 アーティストの別宅のようなセンスの良い中庭、大きな絵が飾られたリビング、のんびり夕方にワインなどを飲みたいルーフテラスなどは、ゆったりとした1日のためにあるものです。
 旅の途中での休日にお薦めでした。

左奥は食堂。中庭を眺めながら朝食が楽しめる。

スタンダードの客室でも20畳以上はありそうだった。

広々としたロビー。個室のラウンジがいくつかあり、奥は朝食の食堂。

ホテルのファサード。門はかなり小さい。
レセプションから客室に向かう階段。

 ブエノスアイレスは、パリのように装飾が施された建物が続くわけではありませんが、アルゼンチンタンゴのヨーロッパへの郷愁と、ヨーロッパのような街を作ろうとした情熱が感じられる都市です。一つの国家の栄華衰退が見られるような街並みは、まるで自分が映画の中に入り込んだような気になります。
 そして美男美女が多いのも、ブエノスアイレス、ラテンの国の良いところです。
出来るなら恋に落ちるような旅がしたいものです。